公務員がブログで副業収入を得ることは、法律のどこを読んでも「絶対禁止」とは書かれていません。ただし「何でもOK」でもなく、規模・継続性・許可の有無によって扱いが大きく変わります。特に女性公務員の方が在宅でできる収入源としてブログを検討する場合、法律の仕組みを正確に理解してから動くことが大切です。
国家公務員法と地方公務員法には「副業禁止」という文言そのものは存在せず、正確には「任命権者の許可なく営利企業の役員になったり、自営業を営んではならない」という制限です。ブログ・アフィリエイトはこの制限の外側にある活動ですが、規模と継続性によっては「兼業」に該当する可能性があります。
この記事では、国家公務員・地方公務員それぞれの法律上の立ち位置、アフィリエイト収入の扱いに関する人事院の見解、住民税による発覚リスクと対策、そして懲戒処分に至った事例のパターンまでを整理します。
公務員の副業を規制する法律の仕組み
公務員の副業ルールは国家公務員と地方公務員で根拠条文が異なります。どちらの条文も「副業禁止」ではなく「許可制」という構造になっている点が重要です。まず条文の内容と「ブログ運営がどこに位置するか」を整理します。
国家公務員法が定める兼業制限の内容
国家公務員法第103条は、営利企業の役員への就任や自営業の経営を「任命権者の承認なしに行うことの禁止」を定めています。第104条は、営利企業以外の事業や団体での報酬を得る活動についても「許可が必要」としています。
つまり、禁止されているのは「無許可で営利目的の事業を営む行為」であり、ブログを開設すること自体が直ちに違反になるわけではありません。ブログに広告を貼ってアフィリエイト収入を得る行為についても、条文の文言だけでは「違法」とは言い切れない状態が続いてきました。
地方公務員法第38条の構造と「許可制」の意味
地方公務員法第38条は「任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業の役員等を兼ねたり、報酬を得て事業・事務に従事したりしてはならない」と定めています。ここでも「許可があれば認められる」という許可制の構造です。
許可の基準は各自治体によって異なり、一律に「ブログはOK」「ブログはNG」と決まっているわけではありません。職場に相談せずに収益化を進めることは、規模が小さくても組織の規則(内規)に抵触するリスクがあります。
国家公務員:国家公務員法第103条・第104条が根拠
地方公務員:地方公務員法第38条が根拠
どちらも「任命権者の許可があれば副業可能」という構造です
ブログ運営はどちらの条文に当てはまるのか
ブログを開設して記事を書くこと自体は、日本国憲法第21条が保障する表現の自由の範囲に入ります。収益化を伴わない純粋な情報発信であれば、副業規制の対象外です。
問題になるのは「継続的・反復的に収益を得ることを目的とした運営」です。e-Gov法令検索で確認できる地方公務員法第38条の文言でも「報酬を得て」「事業・事務に従事」するケースが規制対象であり、趣味の延長でたまたま広告収入が発生した程度では直ちに違反とはなりません。
- 表現・情報発信そのものは憲法が保護する活動
- 収益化の「継続性・規模・営利目的の程度」が判断の分かれ目
- 所属機関の内規によっては、さらに厳しい基準が設けられている場合がある
- 条文の解釈は機関ごとに異なるため、所属先の人事担当への確認が最も確実
人事院が示したアフィリエイト収入の扱い
2024年6月、内閣人事局・人事院が「一般職の国家公務員の兼業に関するQ&A集」を公表し、ブログやSNSのアフィリエイト収入について具体的な見解が示されました。この資料は国家公務員向けですが、地方公務員の制度運用を考える際にも参考になる内容です。
人事院Q&Aの具体的な記述内容
Q&A集の問4では「YouTubeやブログ等でアフィリエイト収入を得ることはできますか」という問いに対し、「基本的に、アフィリエイト収入を得ることだけをもって兼業には該当しません」と明記されています。
ただし同時に「営利目的や投稿の継続性・反復性の有無、規模(主には収入額)等によっては承認又は許可が必要な兼業に該当する可能性があります」とも書かれています。「アフィリエイトは全部OKです」という意味ではなく、規模・目的・継続性の3点で判断されるという内容です。
兼業に該当しないケースと該当するケースの違い
同資料の問3では、制作物への報酬について「単発的に売却や出版等を行い報酬を得る場合には、兼業には該当しません」としつつ、「依頼を受けて定期的に制作を行い、それらに対する報酬を継続的に受領する場合や、自ら企業等に売り込みをするなど事業を営んでいると判断される場合には、承認又は許可が必要な兼業に該当する場合があります」と説明されています。
ブログについても同じ考え方が当てはまります。趣味として記事を書いており、アフィリエイト収入がたまに発生する程度であれば兼業に該当しにくい。一方で、収益を目的として継続的・反復的に記事を投稿し、相当規模の収入を得ている場合は兼業として扱われる可能性があります。
1. 営利目的が明確である
2. 投稿の継続性・反復性がある
3. 収入規模が大きい
3条件すべてが揃うと、承認・許可が必要な兼業とみなされるリスクがあります
地方公務員は所属先への確認が不可欠な理由
人事院のQ&Aは国家公務員向けの資料です。地方公務員の場合、地方公務員法第38条をどう運用するかは各自治体の裁量に委ねられており、国家公務員と同じ基準が適用されるとは限りません。
自治体によっては「年収〇万円以上は許可申請が必要」という内規を設けていたり、逆にブログ運営について特段の規定がなかったりと、対応がまちまちです。はっきりさせるためには、所属先の人事担当部局に直接相談するのが最も安全な方法です。
- 人事院のQ&Aは国家公務員向け。地方公務員にそのまま当てはまるとは限らない
- 各自治体の内規が法律よりも厳しい場合がある
- 相談は匿名でも可能な場合があり、まず聞いてみることが第一歩
- 公務員向け副業支援制度(社会貢献活動など)を持つ自治体も増えている
住民税でバレる仕組みと対策
ブログ収入が発生した場合、多くの公務員が気にするのが「職場への発覚リスク」です。発覚の主な経路は住民税の変化であり、正しく申告・対処することで職場への流入を防ぐことができます。
なぜ住民税でバレるのか
公務員の給与所得には「特別徴収」という方式が適用されており、住民税が毎月の給与から天引きされます。副業収入が増えると住民税額が上がり、その変化が給与担当者の目に触れることで発覚するというのが典型的なパターンです。
副業収入が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要です。ただし、住民税の申告義務は別途存在し、自治体によっては20万円以下でも住民税申告が求められます。国税庁のウェブサイト「税についての相談窓口」や各市区町村の税務課で確認するとよいでしょう。
普通徴収を選択する方法
確定申告書(e-Taxでも紙でも共通)の第二表に「住民税に関する事項」という欄があります。そこにある「給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」で「自分で納付(普通徴収)」を選択すると、副業分の住民税通知書が勤務先ではなく自宅に届きます。
この手続きにより、副業収入分の住民税は自分で直接納付することになり、給与天引き額に反映されなくなります。ただし、自治体によっては副業分を普通徴収に分離できない場合もあるため、確定申告後に市区町村の税務課に反映を確認しておくと安心です。
確定申告が必要になる収入の目安
給与所得以外の所得(ブログ・アフィリエイト収入など)が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。これは国税庁の「雑所得」の案内に基づく基準です。20万円以下であっても、住民税の申告が必要かどうかは自治体ごとに確認が必要です。
ブログ収入の費用(サーバー代・ドメイン代・ツール代など)は経費として差し引けるため、収入から経費を引いた「所得」が20万円以下であれば確定申告は不要です。正確な判断は、国税庁の「確認してみましょう(申告の要否判定)」ページや最寄りの税務署で行うとよいでしょう。
| 収入の状況 | 所得税確定申告 | 住民税の扱い |
|---|---|---|
| 副業所得が年20万円以下 | 原則不要 | 自治体確認が必要 |
| 副業所得が年20万円超 | 必要 | 普通徴収を選択可能 |
| 普通徴収を選択した場合 | — | 自宅に通知書が届く |
- 確定申告の第二表で「自分で納付」を選択するのが基本の対策
- 申告後に市区町村の税務課へ反映確認の連絡をしておくと安心
- 副業所得が20万円以下でも住民税申告が必要な場合があるため自治体に確認する
- 経費を正しく計上することで課税対象の「所得」が下がる
懲戒処分に至るパターンと注意すべきポイント
公務員がブログ副業で懲戒処分を受けたケースは、単純に「収入があった」ことが理由ではありません。処分に至った事例を見ると、共通するパターンがあります。どういった行為が問題視されるのかを把握しておくことが、リスク管理につながります。
処分事例に共通する3つのパターン
公表されている懲戒処分の記録や報道事例を整理すると、次の3つのパターンが繰り返し登場します。1つ目は「本業の勤務時間内に副業作業を行った」ケース。2つ目は「職務上知り得た情報をブログ等で公開した」情報漏えいのケース。3つ目は「副業収入の申告をせず、不正に税を逃れようとした」ケースです。
収入金額の大小よりも、この3点のいずれかに抵触しているかどうかが処分の有無に大きく影響します。在宅で隙間時間にブログ作業を行っていても、公用端末の使用や勤務時間内の作業が確認されると問題になります。
個人の特定につながる情報発信のリスク
ブログの内容に「公務員である自分の日常」「職場の様子」「業務で扱った情報のヒント」などを書くと、記事が拡散した際に個人や所属先が特定されるリスクがあります。特にSNSと連携している場合、匿名のつもりでも過去の投稿から身元が特定されることがあります。
消費者庁の注意喚起資料でも指摘されているように、オンラインでの情報発信は一度広まると完全な削除が難しいという性質があります。職場・業務と無関係のテーマを選ぶことが、身元特定リスクを下げる基本的な対策です。
1. 勤務時間内・公用端末での副業作業は絶対に行わない
2. 職務上知り得た情報は一切ブログに書かない
3. 収入が発生したら正しく税務申告する
4. 所属先の内規を事前に確認し、必要なら許可を取る
副業に関するトラブル相談窓口
副業をめぐるトラブル(高額な副業スクールへの誘導、「公務員でも稼げる」と称する怪しいコンテンツ販売など)は、消費者庁や国民生活センターに相談事例が多数寄せられています。消費者庁の「SNSなどを通じた投資や副業といったもうけ話にご注意ください」という注意喚起ページでは、副業・投資を装った詐欺的手口の具体的なパターンが紹介されています。
「公務員でも月〇万円稼げる」「副業解禁で公務員もOKになった」といった表現でオンラインセミナーや高額教材を販売しているケースには注意が必要です。法律の解釈や制度の変化に関する情報は、人事院・各省庁・所属先の人事担当から直接確認することを基本にしてください。万が一、高額被害や強引な勧誘に遭った場合は、消費生活センター(188番)への相談が利用できます。
- 「公務員向け副業スクール」は高額な場合が多く、消費生活センターへの相談事例もある
- 怪しいと感じたら国民生活センターの相談窓口(188番)へ
- 法律の最新解釈は人事院・各省庁の公式資料で確認する
- 副業情報を発信するブログやSNSには非公式・不正確な情報も混在している
公務員がブログを始める際の現実的なステップ
法律と税務の仕組みを理解したうえで、実際にブログを始めるとしたら何から動けばよいかを整理します。女性公務員が在宅で無理なく続けるための進め方として、スモールスタートの観点から順番に見ていきます。
最初に確認すべき3つのこと
ブログを収益化目的で始める前に確認しておきたいことが3点あります。1点目は「所属先の内規」。人事担当部局に「ブログ収入を得ることに関する内規はあるか」と確認することで、後のトラブルを防げます。2点目は「国家公務員か地方公務員か」の区別。それぞれ根拠条文が異なり、判断基準も違います。3点目は「収益化を目指すかどうか」。収益なし・アフィリエイト広告なしであれば、法的なリスクはほぼ生じません。
確認を通じて「特に制限なし」とわかれば安心して進められますし、「小規模であれば問題ない」という回答であれば規模の目安が明確になります。事前確認は義務ではありませんが、後から問題になるリスクを大幅に下げる行動です。
テーマ選びで気をつけること
ブログのテーマは、職務と直接結びつかない内容を選ぶことが基本です。趣味・家事・育児・旅行・読書・料理など、本業と無関係で個人の生活圏に関わるテーマであれば、職務情報の流出リスクが下がります。
「公務員として働いている自分の体験談」を主軸にすることは避けたほうが無難です。読者から見ると信頼性が高まるように見えますが、所属先や職種が特定される情報を含むと個人特定のリスクが高まります。
収入が発生したら最初にやること
アフィリエイト収入などが初めて発生したら、まず「年間の合計がいくらになりそうか」を把握します。年間所得(収入から経費を差し引いた額)が20万円を超えるかどうかが、確定申告の要否の目安です(国税庁「雑所得」の案内参照)。
確定申告が必要になった場合は、申告書の「住民税に関する事項」欄で「自分で納付(普通徴収)」を選択します。サーバー代・ドメイン代・有料ツール代などは経費として計上できるため、領収書や明細を保存しておくと申告作業がスムーズです。
| ステップ | 内容 | 確認先 |
|---|---|---|
| 1. 内規の確認 | 所属先の人事担当に副業に関する内規を確認 | 所属先人事担当部局 |
| 2. テーマ決定 | 職務と無関係なテーマを選ぶ | 自己判断 |
| 3. 収入管理 | 年間所得20万円超で確定申告が必要 | 国税庁「雑所得」ページ |
| 4. 住民税対応 | 確定申告で「普通徴収」を選択 | 市区町村税務課に確認 |
- まず所属先の内規を確認し、不明な場合は人事担当に相談する
- 収益なし・アフィリエイトなしであれば法的リスクはほぼない
- 収入が発生したら経費を記録し、年間所得の管理を始める
- 住民税は確定申告時に「自分で納付」を選択し、必要なら市区町村に確認する
- 職務に関わる情報は一切ブログに書かない
まとめ
公務員のブログ副業は「禁止」ではなく「規模・継続性・許可の有無」によって判断が変わる許可制の問題です。人事院のQ&A集でも「アフィリエイト収入を得ることだけをもって兼業には該当しない」と明示されていますが、営利目的・継続的な規模になれば許可申請が必要になります。
最初の一歩として最もリスクの低い行動は、所属先の人事担当部局に「ブログ収入に関する内規の有無」を確認することです。確認のうえで問題ないとわかれば、テーマ選び・収入管理・税務申告の3点を押さえながら進めることができます。
法律の仕組みと税務の手続きを正しく理解してから動くことで、リスクを最小限にしながらブログを続けられます。不安なことがあれば、消費生活センター(188番)や税務署の無料相談窓口も活用してみてください。

